【小阪裕司コラム第7話】未来の売上ボックス

【小阪裕司コラム第7話】未来の売上ボックス

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第7話】未来の売上ボックス

あるワクワク系(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を、われわれはそう呼んでいる)のサービス業の社長からのご報告。
今回は、同社が提供しているなかの、ご家庭のお掃除サービスに関する実践事例だ。

依頼してくれたご家庭での作業が終わると、お客さんは予想以上にきれいになったと喜び、その後に、「次はいつ頃、お願いすればいいかしら」と聞いてくれることが多い。
そんなとき派遣されたスタッフは、そのお客さんごとの使用状況に合わせ、次にうかがった方がよい時期をアドバイスする。


例えば、エアコンクリーニングなら1年後から3年後くらい、キッチンやお風呂の水周りなら数ヶ月後から1年後くらいといった具合だ。
するとお客さんはまた喜んで、「その頃、また電話するわね」と言ってくださり、スタッフも「また、お願いします」と言って帰って来る。それがずっと続いていた。

「でも、これなんかおかしいよね」と、ある日社内ミーティングで話題となった。
お客さんが、「また、お願いするわ」と言ってくださっているのに、こちらは待っているだけで、その時期にまた連絡することはほとんどないのが実情だったからだ。

そこで、派遣先でお客さんと次回の作業時期の話ができたら、帰社後その情報を記録して、次はその時期に適確にご連絡できるよう、ファイリングボックスを活用して仕組みを作ってみた。
そしてそのボックスを「未来の売上ボックス」と名付け、運用してみたのだった。

そうして3年が経過、今では、時期が来てご連絡したお客さんの成約率はなんと70%。
同社ではお客さんとの関係性を切らさないための他の様々な手立てもあるし、そもそも前回のサービス提供時の仕上がりや対応の良さにも左右されるので、すべてがこの仕組みによる受注とは言えないのだが、担当者の話などを聞くと、「少なく見ても、成約になったお客さまの半分は、電話しなければ注文は来なかったと思う」とのこと。

この実践で重要なことは、それまで特に気にならずずっと続けてきたことに対し、今回は「これなんかおかしいよね」と思えたことだ。
その疑問から解決策が生まれ、それがなければ失い続けていたであろう売上は守られた。
そして、「未来の売上ボックス」というネーミングも秀逸だ。


そのボックスにファイルされている書類は単に「書類」ではない。
仕組みをきちんと動かせば未来の売上となるものだ。商売をこのようにとらえ、これまでの営みにも良い疑問を持ち、具体的な仕組みを作れること。
それが今日、売上を失わない力、売上を作り出せる力なのである。

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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