【小阪裕司コラム第10話】顧客に応えてもらうには

【小阪裕司コラム第10話】顧客に応えてもらうには

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第10話】顧客に応えてもらうには

先日、全国の住宅・リフォーム会社さんたちが一堂に会し、ワクワク系(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を、われわれはそう呼んでいる)を学び実践する講座で、こんなご報告をいただいた。

その会社で先日、新築物件の上棟式があった。「上棟式」とは、最近めっきり見なくなってしまったが、工事が棟上げ(むねあげ)まで終了したところで行う行事だ。
ちなみに、「棟上げ」とは家の骨組みが完成した段階のこと。上棟式の際には、家は骨組みの状態である。

その上棟式で、その会社が行ったのは、式が終わった後、骨組み状態の家の前で施主さんの家族みんなで記念撮影をし、その写真を額に入れてお届けしたことだ。
しかも撮影の際、後で額装して届けることはあえて言わず、撮影後わずか1時間で施主さんの自宅までお届けした。

これには施主さんも大層感激されたとの報告だった。

他にもこの会社のある工事現場では、組んだ足場に張るネットを、施主さんと一緒に作ることもやったとの報告もあった。
写真を見ると、その足場には楽し気な絵がネットに加工されて張られており、なんでもその絵は、施主さんたちが手形や足形で作ったもの。
施主さん、とりわけお子さんたちは大いに楽しみ、またこの自慢の足場ネットを周囲に自慢しているとのことだった。

またこの会社では、元号が令和となった事を記念し、変更になった5月1日に、特別な顧客の挨拶まわりをした。
そのうち一軒は、「令和元年の最初の請求書をぜひ、○○様でお出しさせてください」と事前にお願いしておいた先。
先方は縁起が良いと大変喜び、5月1日の挨拶の際に請求書を持って行ったところ、その日の夕方に現金を持って支払いに来られたとのこと。
また、ある顧客は、わざわざそんな事までしなくても、と会話が弾み、思いついたかのように相談事から仕事をいただけた。

また、別のもう一軒でも、そんな挨拶をわざわざ、これからもよろしくねと言われ、後日電話をいただき、結局100万超えの仕事をいただけたとのことだった。

この会社が行っていることは、いずれもささやかなことだ。
しかし、最近見なくなった上棟式も含め、彼らの顧客にとってはいずれも印象深いものだ。
特に新築の場合、家を建てるということは、会社側には日常かもしれないが、施主側ではおよそ一生に一度のことだろう。

それを印象深い、思い出深いものにすること。
そして建てた後も、心の通った付き合いをすること。
その誠意と行動に、顧客は応えてくれるものなのである。

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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