【小阪裕司コラム第16話】温かい感性・デザイン・サービス1

【小阪裕司コラム第16話】温かい感性・デザイン・サービス1

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第16話】温かい感性・デザイン・サービス1

先日、私が長らく理事を務める日本感性工学会の大会で、研究発表を行った。

そこでは、ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員企業の実践を題材に、そのセッションのテーマ「温かい感性・デザイン・サービス」が論じられた。

このテーマを聞いたとき、まず頭に浮かんだのが、会員企業のあるリフォーム会社が行ったことだ。
それは、あるお客さんから壁塗りの仕事を受けたときのこと。

壁塗り当日、そのご家族みんなにお休みを取ってもらい、みんなで壁塗りを行ったというものだ。
そのとき、小学校低学年くらいの娘さんが壁に落書きを始めた。そしてそのかたわらに「パパ大好き」の文字が書かれ…。

お父さんはもちろん、家族みんなにとって、この壁塗りは一生の思い出になるだろう。これは、人の温かい感性が、温かい感性に響き合い生まれる、素晴らしいデザインであり、サービスだ。

このセッションでは、まずはイントロダクションとしてこの事例を挙げ、それに連ね、当実践会で大きな成果をあげている漬物の製造小売業の事例をお話しした。

この店は、ワクワク系を始めてからほどなく、大改装を行った。商店街の中にある同店は、それまで、商店街に向け軒先にずらっと商品(漬物)が並んでいる、昔ながらの物販店だった。

それを大胆にも、まるで旅館か料亭のような風情の外観にし、外から店内が
まったく見えない店にしてしまった。入り口は真ん中に引き戸があり、それを
開けて入るしつらえ。そこには瀟洒なのれんがかかっている。

そこを開けると店内だが、これまた以前との大きな違いは、商品はあまり並んでおらず、その代わりに来店客とお茶を飲みながら談笑できるスペースなどが設けられ、全体は外観同様の和のしつらえで統一されている。店主曰く、商品陳列量は以前の約3分の1だ。

京都の観光地あたりにある漬物店ではないので、商店街の中ではひときわ異彩を放っているが、以前の「物を売っています」という風情と比較すれば、これは和の風情に包まれた、まさに「温かい感性」に訴え得る「温かいデザイン」であろう。

結果として同店の業績は、改装前と比較すると、売上で約2倍、利益は2.7倍となり、今日も順調に伸びているが、ではこの成果はこの外観などのデザインの勝利だろうか?

まさに今回のセッションでの論点はそこで、ここには、この物理的なデザインを内包した”サービス全体のデザイン”があり、今日そここそが要だ。

この続きは次回に。

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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