【小阪裕司コラム第27話】熊食べました

【小阪裕司コラム第27話】熊食べました

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第27話】熊食べました

先日、ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員のあるジビエ料理のお店の店主から、こんな実践のご報告をいただいた。

彼によると、私どもに報告レポートを送るため売上の商品データをみていたところ、意外なことに気がついた。
それは、同店のメニューである「熊のステーキ」がステーキの売上でトップレベルになっていたこと。

よく出るなと感じてはいたものの、鹿や猪のステーキの2倍以上の価格のため、気持ちの上では特別な商品と感じていて、実データを見るまでそれほど売上に貢献しているとは思っていなかった。

そのことを奥さんに話したところ、突然彼女がシールを作ってくれた。
これがまた秀逸なもので、「熊食べました」のシール。熊を食べた証として、丸形のシールに熊の絵と「熊食べました」の文字をあしらったものだ。

これを月の輪熊、ひぐま、穴熊それぞれのステーキを注文してくれたお客さんに差し上げたところ、大好評。シールをはって写真撮影したり、携帯にシールをはって再来店してくれる方まで現れ、とても嬉しかったと言う。

熊食べました――これはわれわれ一般人には大イベントで、記念にシールをもらえればもちろん嬉しい。しかし、これらの料理を普段から出している当人たちには意外とこの特別な体験感が分からないもので、このような点は見過ごしがちになる。

そこで今回のような手を打てば、もちろんお客さんの体験価値は高まるし、記憶に粘りやすくなり再来店にもつながるし、口コミにもつながる。こういう実践は、ワクワク系では、業種を問わずよく取り組まれているものだ。

また今回店主が特に嬉しかったことは、このシールを奥さんが自ら考え作ってくれたことだった。
実践会に入会したばかりの頃は、実践の話をしても普通にスルーされていたとのことだが、最近、「いろいろ変わったよね!いいんじゃない」と言われたそうだ。

そして彼は「自分でも変わったな、と思う」と言う。
入会してから店にいる時間は年間1300時間以上減った。
ランチをやめて深夜営業もやめて、休みが多くなった。

そうして体の負担が減っているので精神的にもゆとりがでて、「イイ感じに人生の歯車が回り始めた気がします」。
そして、これが可能になったのは、以前と比べ、何を売るべきなのかがわかるようになってきたことだと。

そんな彼のレポートの終わりはこう締めくくられていた。
「売上をあげるためにワクワク系に入会しましたが、楽しく豊かな人生のつくりかたを学べました」。

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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