【小阪裕司コラム第30話】商いの持続にはこれさえあれば

【小阪裕司コラム第30話】商いの持続にはこれさえあれば

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第30話】商いの持続にはこれさえあれば

2019年も幕を閉じようとしている。今が書き入れ時の方、商売真っただ中の方も
このコラム読者の中には多くいらっしゃることと思うが、あえてここで一言問うておきたい。

今年はどんな年だったか。来年はどんな年にしようとしているか。

今年の最後に、ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の、あるたこ焼き屋さんからのご報告を紹介したい。

その報告書のタイトルは「二度あることは、三度ある」。豪雨による災害についてのことだ。
店主の店はたこ焼き屋さん。郊外の道路沿いにしばしば見かける独立店舗のお店だが、昨年、この店は、豪雨災害により浸水した。

しかしそのとき、多くのお客さんが駆けつけ、後片付けや清掃作業など様々に支援してくれ、早期の営業再開にこぎつけた。
その嬉しさ、安心感から、当時の報告書には「ウエルカムピンチ!ウエルカム災難!」と前向きな言葉すらあった。

しかし今回彼は言う。
「当時そんな前向きなことが書けたのも、どっかで心の中では、もうこんな大きな災害は一生に一度きりで、今後は二度と見舞われることはないだろう、みたいな思い込みがありました」。

今年の7月、二度目があった。報告書の写真を見ると、店の半分ほどが水に浸かり、店内には冷蔵庫が浮いている様子が見える。

しかし顧客らは今回も立ち上がった。

昨年も手伝ってくれた方々は要領も分かっており、5日間で営業再開に。
冷蔵庫に関しては、顧客の中の設備業の方がいち早く在庫を確保、こういったこともあって早期の営業再開を果たせたのであった。

そうしてお礼を兼ねたバーベキューパーティーを企画、準備していた8月、なんと三度目があった。このときはさすがに心が折れそうになったと店主は言うが、三度顧客らは立ち上がった。

今度はなんと3日間で営業再開。立て続けの災害で出費も大きくなったことから、今回は募金活動も行ったが、こちらも予想以上の集まりだった。

商いの持続を支えるもの――それは顧客だ。あなたの店や会社には、あなたに何があろうと支え、絶対につぶさないと動く顧客がどれだけいるだろうか?

これからの社会、さらに変化は激しく速い。
ITが流れ込み、考えるべきこと、打つべき手も多い。

しかし、だからこそ常に振り返ってほしい。商いを支えるのは顧客だ。彼らへの提供価値、長く良い関係を続けるための活動は今どうなっているか、次にどうしていくかを。

件のたこ焼き店主は言う。何があっても、必ず私たちは復活できると。
それこそがこのような時代における、商いの真の強さではないだろうか。

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

会員制サービス
「CaSS
(Car-business Support Service/キャス)」
に関するお問い合わせ

お申し込み方法やサービス内容、その他ご不明な点などがございましたら、
お気軽にお問い合せください!

  • 03-5201-8080
  • お問い合わせフォーム