【小阪裕司コラム第38話】楽しい買い物をいかに生み出すか

【小阪裕司コラム第38話】楽しい買い物をいかに生み出すか

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第38話】楽しい買い物をいかに生み出すか

今、私の右腕を務めている肥前利朗さん。

彼の初めての著作『つらい仕事が天職に変わる!』がもうすぐ世に出るが、彼はもともとワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商いの理論と実践手法を実践する、企業とビジネスパーソンの会)の会員だった。

その頃の彼の実践ぶりがこのコラムの前身である日経MJ紙でのコラムに何度か掲載されたことがある。今回はそのひとつをご紹介したい。

ある店主がユニークな方法でコーヒー豆を売った話。月末に自分の第2子が誕生することを題材として、このコーヒー豆の販促を行えないかと考えた店主は、次のようなセールスレターを毎月のDMに同封した。

筆書きで、面白おかしい雰囲気の自分の似顔絵を描き、その頭には「○○(店主の名前)コーヒー販売責任者」と書かれたはちまきを描いた。文章の方は、見出しは「緊急です 僕に力をかしてください!」。

さらにこう続けた。

「実は私○○、今月末に第2子がうまれるのです。が、それを機に自分への挑戦として、先日みんなに『今月、コーヒー200個売ります!』と宣言してしまいました…。(中略)そこでみなさんにおねがいです!今月中に1コでいいので当店オリジナルコーヒーを買っていただけないでしょうか。(中略)ぜひみなさんの力で私・○○をかっこいい親父にしていただけないでしょうか。何とぞ、よろしくおねがいいたします!」。

そしてDMが届く日を見計らって、レターの絵と同じはちまきをしめ、店頭に立った。

すると、レターが届いた日から常連客が押し寄せた。
「力を貸しに来ました!」という人や「おめでとう!」と言ってくれる人。

「男の子、女の子どっちなんですか?」と訊く人や「おかあさんに言われて買いに来た!」と言ってくれた小学生まで。

なかには「うちはコーヒー苦手で貢献できないけど…」と言って他の商品をたくさん買ってくれた人までおり、電話での注文も少なからず入った。

そして、この企画を始めて数日で通常の月間販売個数の約半数を売り、ほどなく目標は達成された。

人が商品を買う理由、動機にはこういうものもある。
店主が言うには、いずれの場合も、お客さんが実に楽しそうに買い物をしていることが印象的だったそうだ。

不景気で商品が売れない、デフレだと言われながら、人は一方で、常々こういう買い物をしているのである。

以上が当時の文章だが、この実例は、彼が当時店をゼロから立ち上げ、ワクワク系で繁盛店に育ててちょうど2年目を迎えた頃のことだ。

この結果の背景には顧客と築き上げてきた絆があるが、この頃には、どう働きかければお客さんは楽しく買い物をしてくれるのかのコツがつかめてきていたと、振り返って彼は言う。

そのコツをつかみ、顧客との絆があれば、どんなときも楽しい買い物を生み出すことはできるのである。

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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