【小阪裕司コラム第42話】絆ゆえに生み出せる新たな仕組み

【小阪裕司コラム第42話】絆ゆえに生み出せる新たな仕組み

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第42話】絆ゆえに生み出せる新たな仕組み

前回、あるワクワク系(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を、われわれはそう呼んでいる)の本格ウイスキーバーでの、絆作り活動の実践と成果をご紹介した。その話の続き。

今回、なかなか仕入れられない貴重な国産高級ウイスキーの仕入れの機会を得た。
しかし、さすがに1本数十万という仕入れ価格、しかも2本である。

さてどう売ったものかと思案し、初めての試みを実行したが、これまで築いてきた絆が活き、新たな販売方法で良い結果を出すことができた。

彼は何をやったのか。

まずは仕入れの方だが、そもそも世界的に日本のウイスキーが人気を博す現在、今回のような貴重な商品は、大半が大手百貨店や有名ホテルに卸される。一方同店は、本格派バーとはいえ小さな個店だ。

しかし今回声をかけてもらえたのは、日ごろの絆作りの賜物だ。同店の絆作りは、顧客のみならず、取引業者など多くのステークホルダーに対して行われているからだ。さらに今回、納品の仕方などもこちらの都合に合わせてもらえた。

次に、お客さんへの売り方だ。なにせ1本数十万円。

これまで高額なウイスキーを仕入れて販売するときは、顧客名簿からVIP客を抜粋し、試飲会やイベントを企画し、集客、販売してきた。では今回はどうするか。それを思案していた折、あるお客さんからリクエストがあった。

試飲会やイベントは日曜に開催されることが多いが、なかなか行けないのでそこを何とかしてほしいとのことだった。

そこで今回、これまでとは大きく異なる方法を考え、試してみた。それは「シークレットチケット制」というものだ。詳細な説明は省くが、このチケットは限定枚数発売され、購入者はまず一本目を試飲できる権利を獲得する。

そこでよければ、彼らには次のシークレットチケットも優先的に販売する。
各々の購入客はいつ来店してもよいので、先のお客さんからのリクエストにも応えられる。

また、このチケットの購入権利があるのはVIP顧客だけなので、元からのVIP客優遇企画にも合致する。
さらには店側としても、最初にチケットを売ることでお客さんから代金をいただけ、高単価の商品の仕入れも助かる。

といったまさにWIN-WINのこの企画、実際に発売を開始してみると、たったの3日間でチケットは完売。その後も順調に進捗しているとのこと。

今回の成果の背景には、お客さんや仕入れ業者との絆があると店主は言う。それがなければうまくいかなかったと。その絆を背景に、このような新しい仕組みを実現できることは、どんなときにも有利なことだろう。

絆は日常の経営を安定させる最重要要因だが、同時に、様々な機会に、商いを新しいものへと変えていく原動力ともなるのである。

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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