【小阪裕司コラム第55話】ポストコロナ時代の中核的資産とは

【小阪裕司コラム第55話】ポストコロナ時代の中核的資産とは

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第55話】ポストコロナ時代の中核的資産とは

私が主宰しているワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)では、最近、この3月から5月にかけてのコロナ情勢下での実践報告が次々と寄せられている。

それらはみなワクワク系実践企業らしい成果で、驚くものも多いが、今日紹介するあるバー店主からのご報告もそのひとつだ。

こちらは午後8時までの営業自粛となるとダメージの大きい「バー」という業種。
事実同店も4月の緊急事態宣言が発令された後、自粛要請に応え、実質的にはほぼ休業状態だった。
しかしその4月、同店は結果的に前年比で6%しか売上を落とさなかったのである。

同店が行ったことはテイクアウトだ。と言ってもバーである。
ショット売りのウイスキーやカクテルのテイクアウトはできないため、テイクアウトメニューは、「フィッシュ&チップス」「チキン&チップス」「自家製レーズンバターと酒の肴」「ドライカレー」の4種、各1000円。これだけだった。

繰り返し言うが、酒の販売はなし。それでも結果は前年比94%。緊急事態宣言下、巷の多くの飲食店はテイクアウトやデリバリーなどに切り替えたが、そうした店もみな、同じような成果が出ただろうか?
この店とそうでない店との間にどんな違いがあるのだろうか?

その読み解きのヒントに、彼がテイクアウト営業に切り替える直前に行ったことを言おう。
店主は、テイクアウト開始に先んじて、「〇〇(店名)史上最強の危機!」と題した手書きのハガキを、顧客に送った。

そこでは、商品のことやテイクアウト営業を始めることは言わず、厳しい状況のなか、自店は波に飲まれないようしっかり歩んでいくこと、そして「応援してほしい」という気持ちだけをつづった。

その後、テイクアウトの開始とともに、顧客にメールを送ったのである。

当時の心境を彼はこう言う。「(3月下旬の)世の中の流れは自粛ムード。
『これは早く手を打たないと大変な事になる』」そう感じてのこの行動だった。

そして、「お客様の手元に届いたのがなんと4 月 6日!緊急事態宣言発令の前日でした。(このスピード感は大事だったと思います)これが後に爆発的な注文に繋がり始めました」とも。

もちろん、ここで私がお伝えしたいことは、こういうハガキを送ることがその後の注文につながるというハウツーではない。
あなたに考えてほしいことは、彼がなぜこういうことをしたのか。

それがなぜ、「その後の爆発的な注文」につながったのか、ということだ。
彼が今回生かした「事業資源」――それこそが、ウイズコロナ、ポストコロナの時代の商いの、中核的資産となるのである。

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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