【小阪裕司コラム第56話】このピンチをどう切り抜けるのか

【小阪裕司コラム第56話】このピンチをどう切り抜けるのか

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第56話】このピンチをどう切り抜けるのか

先日、ワクワク系(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を、われわれはそう呼んでいる)のカーディラーの店長から、最近のご報告をいただいた。

そのレポートのタイトルは「このピンチをどう切り抜けるのか」。
この4、5月、最悪の業績になってしまったとのお話だ。

報告書にはこうある。「コロナの影響で全社厳しいとはいえ、目標達成率や前年比、スタッフ効率などあらゆる面で考え、他店舗と比べても明らかに最低の実績でした」。

彼は近年ワクワク系を実践し、支店内でもトップクラスの業績を上げてきた。しかしこの時期のこの結果。報告書には「コロナ禍でもワクワク系の仲間たちが驚くべき成果を出している中、私の店舗は一気に谷底に急下降したようでした」とある。

このような結果になった心当たりはあった。

その詳細はここでは省くが、全国的に自動車販売が低迷していたこの時期に、業績を保つ・上げることに集中できず、80%くらいを他のことに割かれてしまっていたのだ。

しかし彼は今回、報告書を書くにあたり、そのなかでもやれたことは何かをまとめてみた。
すると、「ほとんど何も手を打てなかった」と思うなかでも、いろいろやって
いたことはあった。

報告書にはそれらが列記されていたが、例えばそのひとつはショールームのテーブル用の飛散ボードだ。
店頭に設置したところ、雰囲気があまり良くなく、お客さんからもそういう声があった。

そこに、「ボードにマスコットキャラのステッカーを貼ったらどうか」「せっかくだから小さなお子様に貼らせてあげたら喜ぶんじゃないか」とスタッフからの提案があり、実行したところ、雰囲気も明るくなり、お客さんにも喜んでいただけた。

これをはじめ、報告書に列記されていたことは、どれも目先の売上をすぐ生み出す手立てではないが、大切なことばかりだった。

「商いの業績」というものを、あなたはどういうものだと思うだろうか。短期の売上を作るだけでよければ、「業績」とは、「どんな手を打ったのか。それが功を奏したか否か」だ。

しかし、長く愉しく商いを続けるワクワク系の目から見れば、「業績」とは、「それが結果として生み出され続けるエコシステムを作り、維持すること」となる。

ワクワク系のお店や会社とて、業績が良いときばかりではない。そんなときも、彼のように、エコシステムの根幹を崩さないこと。目先を追わず、それでいて必要なことは変えていくこと。

それが長い目で見れば、安定的な業績を生んでいくことにつながっていくのである。

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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