残価設定型クレジットで、盤客の代替を促進する

残価設定型クレジットで、盤客の代替を促進する

カテゴリ:経営コラム, 車販収益増大

残価設定型クレジットで、盤客の代替を促進する

(※このコラムは、2016年5月のマンスリーレポートに掲載されたものです。)

人口減少や少子高齢化、若者のクルマ離れ、世帯所得の減少などの理由により、市場の縮小と競争激化は避けられない近年ですが、この縮小市場の中で、「残価設定型クレジット」の市場は伸びています。

残価設定クレジットは、車両購入時に、新車価格からクレジット終了時(3年から6年)の残価設定価格を引いた金額を分割払いするクレジットです。


この仕組みは、1989年にオニキスのワンナップシステムからスタートし、現在では「トヨタ3年分ください」というCMに見られるように、自動車メーカー各社も独自の残価設定クレジットを展開し、急速に普及しました。


以前は、クレジット終了時に設定した残価が買取金額として保証されていないという点に問題があり、購入時に50%の残価を想定していても、実際の下取が50%にならないといったことも生じ、トラブルとなるケースもありましたが、現在の商品の多くが、クレジット会社もしくは販売各社にて、販売時に車種ごとに残価を保証することが一般的になったため、購入の方法として残価設定型クレジットを選択する消費者も増えてきました。

販売店にとって残価設定型クレジットは、「基盤客との接点強化」と「基盤客の代替促進」を目的とした商品です。

しかし、正しく理解し効果的に活用できてない販売店が非常に多いと感じます。

この目的を認識した上で、商品を活用しなければなりません。
残価設定型クレジットの戦略的な価値は、

  1. 基盤客の入庫率を高める 
  2. 代替サイクルを短縮する
  3. 代替流出を防止

する、の3点です。

①基盤客の入庫率を高める

残価設定型クレジットでは、オイル交換や点検をセットにしたメンテナンスパックを付帯するのが基本です。
メンテパックを付帯している顧客とは、年に2回は顔をあわせることができるため、
顧客接点を増やし、顧客囲い込みに効果を発揮します。

②代替サイクルを短縮する

クレジット終了時の残高と買取額が一致するように設定され、
その金額を販売時に保証していることで、買取相場に影響されることなく、
追加金額なしでの引き取りが可能となるため、消費者にとって、乗り替えがしやすい仕組みとなります。
これにより、クレジット終了時に乗り替えを促進し、代替サイクルを短縮することができます。

③代替流出を防止する

弊社提携の新車チェーンの、3年後のリピート率は70%以上です。
そのうちの45%が代替し、25%が乗り続けます。
代替しない場合でも、買取保証があれば他社流出せずに顧客が戻ってくるため、顧客の離脱防止に効果を発揮します。

販売店は、この残価設定型クレジットの戦略的価値を正しく理解し、クレジット終了時に代替を促進しなくてはなりませんが、多くの販売店は、代替ではなく再クレジットを利用して乗り続けることを、顧客に選択させてしまっています。

その要因は、販売時の顧客への商品価値の訴求の仕方にあります。
ディーラーをはじめ多くの販売店は、残価設定型クレジットのメリットを「月々の支払いが少ないことである」と顧客に啓蒙していますが、販売時に顧客に伝えなくてはいけないのは、残価設定型クレジットを使うと、3年ごとに新車に乗り替えられることです。

長く乗り続けるよりも、3年ごとに乗り替えることの方が、お客様にとってメリットがあると伝える必要があるのです。
例えば、新車を購入し、6年間乗り続けた場合、その間には2回の車検取得費用が発生し、タイヤやバッテリー、ファンベルトなどの消耗品を交換する費用が発生します。

メーカー保証も3年で切れますので、それ以降の故障についてはユーザーが負担しなくてはならないケースが多くなります。
また、長く乗り続けると、下取額は安くなっていきます。

一方で、3年ごとに乗り替えた場合、車検の取得費用が掛からず、タイヤやバッテリー、ファンベルトなどの消耗品を交換する費用も発生せず、常にメーカーの保証期間の中で安心して車を使用することができます。

そして、3年後の下取金額は、市場で人気があり残価の高い車であれば、6年後の下取額の倍を超えます。
高年式の中古車市場では高値で取引されるからです。


6年間乗り続けた場合と3年で乗り替える場合のトータルコストを比較すると、残価の高い車であれば、大きく変わらないことがわかります。

3年ごとに新車に乗り替えができると、常に最新型の、安全性の高く、燃費や環境性能の良い車に乗り続けることができます。
ここ近年は、自動ブレーキなどの安全装置が普及し始め、その性能は今後もますます進化し続けると思いますし、またハイブリッド車に限らず、燃費や環境性能もますます高まります。

3年ごとに最新の新車に乗り替えることができれば、6年間乗り続けた場合と3年で乗り替える場合のトータルコストの差は、それほど大きくないのではないでしょうか。

また、3年ごとに乗り替えするのであれば、ライフスタイルに合わせて、違った車種にすることも可能です。

子供が増えたのでもう少し大きな車に変えたい、通勤距離が長くなったので燃費の良い軽自動車にしたいなど、購入時には想定しなかった身のまわりの環境変化に合わせて、自在に車種を変えられるのも、残価設定型クレジットのメリットです。

こうした顧客にとってのメリットを、販売時に訴求し啓蒙し続けている販売店では、顧客が、経済的なメリットだけではなく3年ごとに乗り替えができる楽しさを感じ、乗り替えを前提として残価設定型クレジットを選択しているため、クレジット終了時に自然と代替が進んでいきます。

繰り返しとなりますが、販売店にとって残価設定型クレジットは、「基盤客との接点強化」と「基盤客の代替促進」を目的とした商品です。
この目的を正しく理解し、残価設定型クレジットを効果的に活用して、基盤客の代替を促進していただきたいと思います。

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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