「理念」は絵にかいた餅じゃない

「理念」は絵にかいた餅じゃない

カテゴリ:組織力強化, 経営コラム

「理念」は絵にかいた餅じゃない

(※このコラムは、2017年8月のマンスリーレポートに掲載されたものです。)

様々なセミナーに参加すると「経営理念」の重要性を説く場面があります。
”その通り、絶対必要だ!”とか“つくってはいるけど、浸透しないから意識してないよ”、更には”規模が大きくて、余裕ある会社なら必要だけど、ウチのレベルじゃ、要らないよ”そんな意見が聞こえてきそうです。

仰る通り、経営理念を唱えたところで業績が高まる保証はありません。
でも本当に“規模が小さいから”とか“そんなレベルにない”といって、つくらなくてもいいものなのでしょうか?

そもそも「理念」って何? それって必要なの?

「理念」という言葉について調べてみると、
“ある物事についての、こうあるべきだという根本の考え”
“哲学で、純粋に理性によって立てられる超経験的な最高の理想的概念”
と、何やら小難しい言葉が並んでいます。

でも、言葉を分解してみると、
【理:すじ、ことわり、きめ、念:心中深く思う】
となりますから、“物事に対する筋道や考え方を深く思う”という文章になります。
しかし、現場での作業や顧客対応をしているときに、そんな煩わしいことをいちいち念頭に置きながら仕事をしている人はまずいないでしょう。

でも、知らないうちに会社の「判断基準」になり、些細な日常業務にこそ、なおさら深く浸透していくのは間違いありません。

例えば、皆様の従業員はお客様がご来店されたらお出迎えに行きますか?
お出迎えが当然と思っている人は、何よりも真っ先に向かいます。

でもお出迎えが当たり前になっていない人は、まず自分の日常業務が優先されるでしょう。

お客様の気持ちは様々ですから、“出迎えて当然”と思う方もいらっしゃれば、“いちいち出迎えられても鬱陶しい”と思う人もいるかも知れません。

では、「お客様満足の追求」という経営理念が掲げられていたらいかがでしょう?
各人の理解度合はともあれ、お客様のタイプに隔てなく、ご来店いただいた方には、“どなたであってもお出迎えすることが礼儀である”という判断になるでしょう。
これは、経営者が不在でも「成り代わって」実施して欲しい判断基準なのです。

この判断基準があれば、従業員は例え苦手でも何とかしようとします。
何も無いから自己判断で行動するのであって、それが良いことなのか?悪いことなのか?この会社ではどのような基準を常識としているのか?が分からないだけなのです。

「経営理念」はその会社が大切にする重要な思いが込められるのが通例です。

①価値をもたらしてくださるお客様にどのように接すれば良いのか?
②従業員に対して、経営者が“成り代わって実行してほしい考え方”は何か?
③従業員は理念に基づく行動を通じて、どのように成長してほしいのか?
④会社は与えられた資源を使って、何に役立つのか?

これらを、「わざわざ話さなくても、見ればわかる」状態にしてくれます。

日々の業務を積み重ねる中で、ふとした瞬間にお客様から

“あなたの笑顔はステキですね!”
“皆さん、楽しそうに仕事をしていますね!”
“同じ社会人として、あなたの仕事ぶりを見習わなくっちゃ”

などと評価いただいたらいかがでしょう?
従業員は、自分の仕事と会社に誇りを持てる状態になるはずです。
正しい「仕事観」を育むことができるのは「経営理念」あってのことだと思います。

工程ボードの確認と理念唱和は同じ。理念を特別なものにする必要は無い。

整備業の皆様にはお馴染みの工程ボード。
この工程ボードを活用して、毎日、入庫・代車・出庫を管理し共有することで、それぞれに仕事の段取りを考える主体性を養成します。

理念を唱和するのも要は同じです。
理念を毎日唱和することで、この会社で働くための考え方を腹に落とし、実行するための姿勢を習慣化することで心構えができる。
つまり“ヤル気スイッチ”を、自ら入れることができるのです。

これらを毎日実施している会社とそうでない会社を比べてみるといかがでしょう?毎日理念唱和をしている会社の方が、顧客に愛される可能性は高いだろうと容易に判断できると思います。

どんな会社でも「経営理念」はある。無いのではなくて、つくらないだけ。

上記の様に経営者であれば、必ず“成し遂げたい願望”を必ず持っています。
それではなぜ「経営理念」が無いのか?

  • 立派に見える、カッコ良い理念をつくりたいから
  • 規模が小さいのに、立派な理念と実際の業績が見合わないから
  • 面倒で、難しすぎて自分ではつくれないし、頼めば高い費用がかかるから・・・etc.

多々理由はあると思います。
しかし、この本音は形にこだわろうとするあまり、 大企業の様な“壮大かつ社会的意義の高い経営理念を作らなければダメだ”と思い込んでいるからではないでしょうか?

でもどんな会社であっても経営者は、成し遂げたい夢、獲得したいもの、そのためにありたい姿など、限りない理想を持っています。
それをつくっているか、つくらずにいるか、だけの違いです。
もし、理想が無い方がいらっしゃればその方が問題です。
理想が無いということは、成長を諦めているという証拠だからです。
諦めという傘では雨はしのげません。理想に正邪(せいじゃ)はありませんので、先述の通り働く従業員の「仕事観」を養う上でも、つくらない理由は無いと、私は思います。

「理念」は絵に描いた餅じゃない

私が担当するクライアントでも同様なことがありました。
理念を新たにつくらなければならないとずっと考えていたのですが、つくろうと考えると難しくて、手を付けられず、時間ばかりが過ぎていました。

しかし、客観的に見てみると、普段の社長の言動、顧客への接し方、この会社で働く従業員に求めることが、ホームページの会社案内に記載されていました。
無意識に記載した内容が、経営に関わるすべての活動の判断基準だったことに気が付いたのです。

その後、理念ボードを作り、朝礼で唱和するようになってからは、従業員も一丸となって社業を盛り上げてくれています。
社長が業務で手一杯のときは、さりげなくサポートしてくれますし、商談代行もしてくれます。
従業員も顧客との談話が楽しそうです。

理念は絵に描いた餅ではありません。
幼少期に学んだことから始まり、日常で感動したこと、思い悩んだこと、心揺さぶる出来事、数々の失敗など、深く心に刻まれたことが根幹を成します。
これらは、経営理念の定義“超経験的な最高の理想的概念”そのものと言えるでしょう。

未だ「経営理念」を掲げていない方がいらっしゃれば、難しく考えず、日頃から口酸っぱく言葉にしている内容やお客様・他社から叱咤激励、反対に反省させられた出来事など、日常の中で刻まれた言葉を綴ってみてはいかがでしょうか?

それを“簡にして要”つまり、端的に伝えたい気持ちを表現するとどういう言葉になるのか?自分の会社らしい表現は何か?を練りに練って、一所懸命に探し求めるのです。

そうやって苦労して出来上がった「経営理念」は、一人歩きを始めます。日々唱和していくと言葉が「言霊」となって、行動も変わります。更に社内に、社外に受け継がれていきます。これが浸透の正体なのです。

浜口 隆 Hamaguchi Takashi

浜口 隆 Hamaguchi Takashi

自動車業界をはじめとした様々な業界における業態開発、マネジメント、経営コンサルタント等、多岐に亘るキャリアを経て、2006年のカーリンクチェーン発足時からSV(店舗指導)の中心メンバーとして活躍。
自動車整備業、サブディーラー、中販店、カーディーラー、SSと様々な加盟企業を担当し、SV業務を推進する一方で、オーナーの要望に応える中で各企業の組織全体の人材育成や業務改善等の支援活動を行い、次々と組織力強化を実現している。

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