【小阪裕司コラム第23話】どうすれば社内に浸透するか

【小阪裕司コラム第23話】どうすれば社内に浸透するか

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第23話】どうすれば社内に浸透するか

ワクワク系に限ったことではないが、会社として新しい考えややり方を取り入れるとき、そこには様々なハードルがある。なかでも多く聞かれる悩みのひとつは、その考え方ややり方をどう社内に浸透させるかというものだ。

今回はそれに関連して、ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員のあるパン屋さんの例をお話ししよう。

店主は考えた。自店のパン職人さんに、自分が学び、実践しているものをどう伝えるか。
機を見てきちんと話したいと思いつつ、パンを仕込みながらじっくり話をするのは難しく、機会を逸していた。
そんななか、例えばパン職人さんが作るPOPを見ていると、書かれているのは品名のみ。

ワクワク系では、これでは動機づけがなされない、価値が伝わらない、その結果「売れない」ことになってしまう、と理解する。しかしその視点がなければ、せっかくの自信作が売れない⇒商品が悪いと考える⇒また新しい商品を考える、という悪循環になってしまうかも、と危惧していた。

そこで店主が利用したのは、私が幾多の事例を紹介し、私の解説付きでまとめている
音声番組だ。その詳細はここでは割愛するが、とにかく具体的な事例が中心の、初心者向けのものだ。それを聞いたパン職人さん。

最初は幾つかの事例を聴き、「本当にそれだけで売れたのかな」と疑問もあったようだが、その会話をきっかけにいろいろ意見交換していくと、その後も自然と聴き進めていたようで、ある日そのなかのひとつの事例を自店でもアレンジして試してみたらどうかと、パン職人さんから提案があった。

その事例とは、あるレストランが入り口付近に握力計を置き、お客さんと一緒に盛り上がっている話。
その後、いろいろな企業が同様のことを試してみて、面白い結果が得られている話だ。

それを自店では握力計ではなく、昔からある「黒ひげ危機一髪」というゲームに置き換えて、やってみようという。
その際のアレンジ案も、パン職人さんから具体的に提案があった。
そうして実際にスタートしてみると、お客さんとの会話と笑顔も生まれ、店主としては一石二鳥の嬉しい展開となっていったのだった。

新しい考え方ややり方はどうすれば社内に浸透するか――それに役立つもののひとつは「事例」だ。事例を「面白い」と思えれば、自分でもやってみたくなる。

それが結果を生み出せばまた「面白い」となる。そのときその背景にある理論や考え方を伝えれば、実は学びが進む。そうしているうちに、気づけば新しい考え方ややり方がなじんでいく。

今日ビジネスで実を結ぶ「学び」とは、そういうプロセスなのである。

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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